トロント周辺には、日本語を学べる場所がいくつかあります。
ただし、ひとことで「日本語学校」と言っても、目的によって選ぶ場所は大きく変わります。
この記事では、大人が趣味で日本語を学ぶクラスではなく、次のような人に向けてまとめます。
- カナダ人と結婚し、子どもに日本語を学ばせたい家庭
- 駐在や帯同でトロントに来て、将来日本へ戻る可能性がある家庭
- カナダで育つ子どもに、日本語・日本文化・日系コミュニティとのつながりを残したい家庭
- ワーホリでトロントに来て、外国人に日本語を教えてみたい人
日本語教育は「どこが一番良いか」ではなく、「子どもの目的・家庭での日本語環境・将来の進路」に合っているかが大切です。

トロントで子どもの教育環境を考える場合は、トロント・ミシサウガ近郊の公立学校ガイド、塾・家庭教師の探し方、大人向けの英語学習を探す場合は語学学校・ESLガイドもあわせて確認すると、学校・家庭学習・語学学習の全体像を整理しやすくなります。
まず決めたい「日本語を学ぶ目的」
子どもの日本語クラスを探す前に、まず家庭内で目的を整理しましょう。
同じ「日本語を学ぶ」でも、次の4つはまったく違います。
1. 将来日本へ帰国する予定がある
駐在、帯同、数年後に日本へ戻る予定がある家庭は、日本の学年に沿った国語、算数、理科、社会などを日本語で学べる環境が必要になる場合があります。
この場合は、単なる会話クラスでは足りないことがあります。日本の学校に戻ったときに困らないよう、読み書き、漢字、作文、教科学習を継続できるかが重要です。
2. カナダで育つ子どもに日本語を残したい
カナダ人と結婚した家庭、永住家庭、日系・日加家庭では、「日本語を完璧にする」よりも、家庭内での会話、祖父母との会話、日本文化への理解、自己肯定感を育てることが大切になることもあります。
この場合は、継承語としての日本語教育に向いた学校やクラスが候補になります。
3. 家庭内では日本語をあまり使わないが、日本語に触れさせたい
片親が日本語を話せない、家庭内では英語が中心、子どもが日本語を嫌がる、という家庭もあります。
この場合、いきなり漢字や作文を厳しく進めるより、歌、絵本、遊び、文化体験、会話から入れるクラスの方が続きやすいことがあります。
4. ワーホリで日本語を教える経験をしたい
ワーホリの人が「日本語を教えたい」と思った場合、いきなり先生として働くより、まずは会話ボランティア、ランゲージエクスチェンジ、学校のアシスタント、個人チューターなどから始めるのが現実的です。
ただし、子ども相手の活動では、身分確認、英語力、過去の経験、警察のバックグラウンドチェックを求められることがあります。
駐在・帰国予定の子ども向け:トロント補習授業校
将来日本へ帰国する予定がある家庭や、日本の学校教育に近い形で学ばせたい家庭は、まず「トロント補習授業校」を確認するとよいです。
トロント補習授業校は、カナダ・トロントにある在外教育施設で、日本の学齢に沿ったカリキュラムで学ぶ学校です。国語だけでなく、算数・数学、理科、社会などを日本語で学ぶため、単なる日本語会話クラスとは目的が異なります。
向いている家庭は、次のようなケースです。
- 数年後に日本へ帰国する予定がある
- 日本の学校へ戻る可能性がある
- 子どもが日本語で教科学習できる力を維持したい
- 家庭でも日本語学習を支えられる
- 土曜日の通学、宿題、保護者のサポートに対応できる
一方で、すべての家庭に向いているわけではありません。
日本語で教科学習をするため、家庭内で日本語をほとんど使っていない子どもには負担が大きい場合があります。また、土曜日の通学、宿題、学校行事、保護者の関わりもあるため、「週1回だけ軽く日本語に触れたい」という家庭には別の選択肢の方が合うこともあります。
入学時期、編入条件、学齢、日本語力、授業料、説明会の時期は年度によって変わるため、必ずトロント補習授業校公式サイトの「入学・編入学案内」を確認してください。
カナダで育つ子ども向け:継承日本語の学校
カナダで生活する子どもに日本語を残したい家庭は、継承語として日本語を学べる学校やクラスを探すとよいです。
継承日本語の学校は、日本語を「外国語」としてゼロから学ぶ場所というより、家庭やルーツとつながる言葉として日本語を育てる場所です。
特に次のような家庭に向いています。
- 片親または両親が日本語を話す
- 子どもが日本語を聞く機会はあるが、読み書きが弱い
- 日本の祖父母と話せるようにしたい
- 日本の行事、文化、歌、絵本にも触れさせたい
- カナダで育ちながら、日本語や日本のルーツも大切にしたい
トロント周辺で名前が挙がる学校・団体には、次のようなものがあります。
日加学園
日加学園は、トロント周辺の継承日本語教育の場として知られています。日本語で授業を行い、日本語学習だけでなく、日本文化、行事、発表、交流なども大切にしている学校です。
日本国内で使用されている教科書を使う場合もあるため、会話だけでなく、読む・書く力も伸ばしたい家庭に向いています。
日修学院
日修学院は、継承日本語教育の選択肢として在トロント日本国総領事館の日本語教育情報にも掲載されています。家庭で日本語を使う子ども、または日本語の基礎がある子ども向けに検討されることが多い学校です。
トロント国語教室
トロント国語教室も、トロント周辺で長く知られている子ども向け日本語教育の場です。読み・書き・聞く・話す力を育てながら、日本語を通じて日本文化に触れることを目的としています。
Toronto Japanese Language Schoolの子ども向け・継承クラス
Toronto Japanese Language Schoolは、子どもから大人まで幅広い年齢層を対象にした日本語教育の場として知られています。子ども向けプログラムや継承クラス、JFLクラスなど、家庭の日本語環境によって選択肢が変わる場合があります。
人気のあるクラスはウェイトリストになることもあるため、早めにToronto Japanese Language School公式サイトを確認するのがおすすめです。
在トロント日本国総領事館の日本語教育情報では、帰国予定の家庭向け、永住家庭の子ども向け、日本語以外の家庭環境向けなど、家庭背景に応じた学校・クラスが整理されています。
日本語初心者・家庭内で日本語が少ない子ども向け
家庭内で日本語をあまり使っていない場合や、子どもが日本語をゼロに近い状態から学ぶ場合は、いきなり補習校や継承語クラスに入れると負担が大きいことがあります。
その場合は、次のような選択肢もあります。
TDSBのInternational Languages Elementary Program
TDSBでは、KindergartenからGrade 8までの子どもを対象に、International Languages Elementary Programが開講される年度があります。
日本語が開講言語に含まれる場合があり、TDSBの生徒だけでなく、TDSB以外の子どもも対象になることがあります。
通常の日本語学校より費用が抑えられることが多く、「まず日本語に触れさせたい」「週1回、無理なく始めたい」という家庭にとっては候補になります。
ただし、開講場所、曜日、対象学年、登録方法、最低開講人数は年度によって変わります。必ずTDSB International Languages Elementary ProgramやTDSBのFind a Classで最新情報を確認してください。
初心者向け・JFL向けクラス
家庭内で日本語がほとんど使われていない子どもは、「日本語を継承語として学ぶクラス」よりも、「Japanese as a Foreign Language」として学ぶクラスの方が合うことがあります。
たとえば、ひらがな、カタカナ、簡単な会話、日本文化、歌、ゲーム、絵本などから始めるクラスです。
親が「日本語を話せるようになってほしい」と思っていても、子ども本人が楽しいと感じないと続きません。最初は完璧な読み書きよりも、日本語に対して嫌な印象を持たせないことが大切です。
日本の教科書をトロントで受け取る方法
意外と知られていませんが、条件を満たす子どもは、日本の教科書を在トロント日本国総領事館を通じて受け取れる場合があります。
対象になるには、主に次のような条件があります。
- 在トロント日本国総領事館に在留届を提出している
- 子どもが日本国籍を持っている
- 日本の義務教育学齢期である
- 長期滞在中、または永住者で将来日本へ帰国・進学する意思がある
- 教科書配布の申込をしている
配布される教科書は、該当学年の1セットです。希望する学年を自由に選べるわけではなく、日本の義務教育学齢に基づいて決まります。
すでに現地の日本語学校に在籍している場合、学校がまとめて申し込むことがあります。トロント補習授業校、日加学園、日修学院、トロント国語教室、トロント日本語学校などに通っている場合は、個人で申し込む前に、まず学校へ確認しましょう。
申込には、教科書配布願いと、子どもの日本国籍を確認できる書類が必要です。受け取りはOCSによる配送になる場合があります。
対象外の人、日本国籍がない子ども、申込期限に間に合わなかった人は、自費で購入する必要がある場合があります。トロント周辺では、Blue Tree Booksなどを通じて日本の教科書や本を取り寄せる方法もあります。
また、日本からこれからカナダへ長期滞在する予定の家庭は、出国前に海外子女教育振興財団を通じて教科書を受け取れる場合があります。渡航前に確認しておくと安心です。
教科書配布の条件、締切、申込方法は年度によって変わります。必ず在トロント日本国総領事館の教科書の配布ページを確認してください。
Japan Foundation Torontoで本・教材を借りる
トロントで日本語や日本文化に触れたい家庭は、Japan Foundation Torontoも活用できます。
「BloorとAvenueの近くにあった日本のファンデーション」と覚えている人もいるかもしれませんが、現在の公式住所は、2 Bloor St. E., Suite 300です。Hudson’s Bay Centreの3階、Yonge and Bloor周辺にあります。
Japan Foundation Torontoには、日本語学習、日本文化、日本文学、歴史、アート、映画などに関する本や教材があります。英語、日本語、フランス語の資料があり、日本語学習者だけでなく、子どもに日本語の本を読ませたい家庭、日本語を教えたい人にも役立ちます。
図書館カードを作ると、対象資料を借りたり、デジタルライブラリーを利用できる場合があります。物理的な本を借りるには、写真付きIDとカナダの住所確認書類が必要です。
おすすめの使い方は次の通りです。
- 子ども向けの日本語の本を探す
- 日本語学習教材を比較する
- 日本語教師向けの教材を探す
- 日本文化や歴史の本を読む
- デジタルライブラリーで電子書籍やオーディオブックを利用する
- 日本語を教える前に、教材の作り方を学ぶ
日本語学校に通わせるほどではないけれど、家庭で日本語の本を増やしたい人には、とても便利な場所です。場所や利用条件はThe Japan Foundation, Torontoのアクセス情報とLibraryページで確認してください。
JCCCで日本語の本・日本文化・武道に触れる
Japanese Canadian Cultural Centre、通称JCCCも、トロントで日本語や日本文化に触れたい家庭におすすめです。
JCCCは、6 Sakura Wayにある日系文化会館です。日本語教育だけでなく、日系カナダ人の歴史、日本文化、映画、イベント、図書館、武道、文化クラスなど、幅広い活動があります。
JCCC Library
JCCCには図書館があり、日本文学、児童書、漫画、雑誌、日系カナダ人の歴史に関する資料などがあります。
閲覧は誰でも可能ですが、貸出サービスはJCCC会員向けです。子どもと一緒に日本語の本を見たり、日系の歴史を学んだり、日本語に自然に触れる場所として活用できます。
日本語学校に通うだけではなく、こうした図書館を使って「日本語の本が身近にある環境」を作ることも大切です。
JCCCの武道・文化プログラム
JCCCでは、日本に関係する武道や文化プログラムも行われています。
たとえば、次のような武道プログラムがあります。
- 合気道
- 居合道
- 杖道
- 柔道
- 空手
- 剣道
- 弓道
- なぎなた
日本語そのものを学ぶだけでなく、礼儀、姿勢、挨拶、武道の言葉、日本文化への理解を深めるきっかけになります。
子どもが日本語の勉強に乗り気でない場合でも、空手、柔道、剣道、太鼓、映画、祭り、図書館など、別の入口から日本文化に触れることで、日本語への関心が出てくることもあります。
JCCCの最新プログラムは、Japanese Canadian Cultural CentreのProgramsページで確認してください。
ワーホリがトロントで日本語を教える方法
ワーホリでトロントに来た人の中には、「外国人に日本語を教えてみたい」「日本語教師の経験を作りたい」と考える人もいます。
日本語を母語として話せることは強みですが、それだけで良い先生になれるわけではありません。特に初心者に教える場合は、英語で文法を説明する力、教材を選ぶ力、相手のレベルに合わせる力が必要です。
まずはランゲージエクスチェンジから始める
いきなり有料レッスンを始める前に、まずはランゲージエクスチェンジに参加してみるのがおすすめです。
トロントには、日本語と英語を練習する交流グループがあります。日本語を学びたい人と話すことで、どんな質問をされるのか、どこでつまずくのか、どんな説明が伝わりやすいのかが分かります。
これは「先生」として教えるというより、お互いに言語を練習する場です。日本語を教える経験の第一歩として使いやすいです。
Japan Foundation Torontoのボランティア
Japan Foundation Torontoでは、イベント、図書館、ギャラリー、日本語学習サポートなどのボランティア募集が出ることがあります。
日本語会話ボランティアは、日本語学習者と会話したり、質問に答えたりする活動です。一定以上の日本語力が求められる場合があります。
日本語教育に興味がある人は、こうした場で経験を作ると、将来チューターや日本語教師に進むときの実績になります。
日本語学校のアシスタント・ボランティア
Toronto Japanese Language Schoolなどでは、子どもクラスのティーチングアシスタントやボランティアの募集が出ることがあります。
子ども相手の活動では、責任感、時間厳守、英語でのコミュニケーション、保護者対応、先生の指示を理解する力が必要です。
また、学校や団体によっては、Vulnerable Sector Checkなどの警察チェックを求められる場合があります。子どもと関わる活動では、早めに必要書類を確認しましょう。
有料で教える場合の注意
ワーホリで有料の日本語レッスンをする場合は、働けるビザ条件とSINを確認してください。
カナダで収入を得る場合、SINが必要です。現金手渡しで記録を残さない働き方、税金を申告しない働き方、ビザ条件に合わない働き方は避けましょう。
SINについては、トロントでSINを申請する方法も確認してください。求人やチューター募集を探す場合は、求人掲示板やDirectoryの教育・語学カテゴリも参考になります。
個人チューターとして始める場合も、次の点を明確にしておくとトラブルを防げます。
- 対象:子ども、大人、初心者、会話、JLPTなど
- 料金:1時間いくらか
- 場所:オンライン、カフェ、図書館、自宅訪問など
- キャンセル規定
- 教材費の扱い
- 支払い方法
- 子どもを教える場合の保護者同席ルール
- レッスン内容と宿題の有無
特に未成年を教える場合は、安全面を最優先にしてください。個室で1対1にしない、保護者と連絡を取る、公共の場所やオンラインで行うなど、相手にも自分にも安心な形を選びましょう。
警察チェックについては、必要な種類や申請方法が活動先によって異なるため、必ず受け入れ先の学校・団体とToronto Police ServiceのPolice Record Checksページで確認してください。
学校・クラス選びのチェックリスト
子どもの日本語学校を選ぶときは、名前だけで決めず、次の点を確認しましょう。
子どもに合っているか
- 子どもの年齢に合っているか
- 日本語をどれくらい理解できる前提か
- 家庭で日本語を使う必要があるか
- 初心者でも入れるか
- 読み書き中心か、会話中心か
- 宿題の量はどれくらいか
- 日本の教科書を使うか
- 子どもが楽しく通えそうか
家庭が続けられるか
- 通学場所が遠すぎないか
- 土曜日や平日の時間に通えるか
- 保護者のサポートが必要か
- 送迎できるか
- 兄弟姉妹で通えるか
- 授業料、教材費、登録料が予算に合うか
- 欠席時の対応はあるか
- ウェイトリストがあるか
将来の目的に合っているか
- 日本へ帰国予定があるか
- カナダで継承語として続けたいのか
- 日本語を話せればよいのか
- 読み書きも必要なのか
- 日本の学校に戻る可能性があるのか
- 日本文化や日系コミュニティとのつながりも重視するのか
公式情報として確認したいページ
最新情報は年度によって変わります。申し込み前に、必ず各団体の公式サイトを確認してください。
まとめ
トロントで子どもに日本語を学ばせる場合、まず大切なのは「目的」を決めることです。
日本へ帰国する予定がある家庭は、日本の学齢や教科学習に沿った補習校を検討する必要があります。
カナダで育つ子どもに日本語を残したい家庭は、継承日本語の学校や、日系コミュニティとのつながりを大切にできる場所を選ぶと続けやすいです。
家庭内で日本語が少ない場合は、いきなり厳しい読み書きから入るより、会話、絵本、文化体験、TDSBのInternational Languagesなどから始める方法もあります。
また、日本の教科書は、条件を満たせば在トロント日本国総領事館を通じて受け取れる場合があります。知らずに自費で買ってしまう前に、必ず公式情報を確認しましょう。
トロントには、Japan Foundation TorontoやJCCCのように、日本語の本、教材、日本文化、日系の歴史、武道に触れられる場所もあります。
日本語は、学校だけで身につくものではありません。家庭、図書館、友達、イベント、文化体験を組み合わせながら、子どもにとって無理なく続けられる形を見つけることが大切です。



